旺盛なインバウンド需要で注目を集めているホテルリート。インヴィンシブル投資法人は総合型リートでありながら、ホテルを中心に積極的な物件取得を進めており、今後の成長にも期待がかかっています。同投資法人執行役員で、資産運用会社コンソナント・インベストメント・マネジメントの代表取締役社長である福田直樹氏に、好調の理由と今後の戦略などを聞きました。
第26期(2016年6月期)を振り返って、
どのような半年だったでしょうか。
福田氏決算発表は8月になりますが、年初からの株式市場の調整、円高進行等、マーケット環境が変化する中で総じて良い決算期だったと考えています。ホテルのパフォーマンスは4月の熊本地震の影響はあったものの、通期では相変わらず堅調です。2015年の成長率が極めて高かった為、鈍化したように見えますが、中長期的なホテルセクターのファンダメンタルズは変わっていないと考えています。
本年3月に過去2年間で3回目のグローバルオファリングを成功させ、これによる物件取得を含め、1〜6月で3回に亘り、合計928億円の物件取得を実施しました(内、848億円がホテル物件の取得)。ホテルに投資し始めた2014年の年間の取得額は453億円、2015年の取得額は558億円でしたので、今期は成長を更に加速させ、当投資法人(以下、当社)の外部成長力の高さを十分に示すことができたと考えています。
ここ1年ほどを対象にした含み益の伸び率のランキングで全リート中1位だったという報道がありました。その要因はどこにあると分析していますか。
インヴィンシブル投資法人執行役員
福田 直樹氏
福田氏当社は世界最大級のオルタナティブ投資家であるフォートレス・インベストメント・グループがスポンサーであり、フォートレスはオリンピック東京開催が決まる以前の2010年からホテルに着目し投資を開始、当社もインバウンド(訪日外国人客)数が大きく増加する前の2014年からホテル投資を開始しています。取得後にホテルの業績が大きく伸びていることが物件の価値を向上させ、含み益率アップに寄与しています。
前述の通り、積極的な物件取得により2016年6月末現在の運用資産は2,666億円、内、ホテルが1,810億円となりました。ホテルの時価(鑑定評価額)は2,300億円を超えています。これだけの外部成長を実現している一方で、スポンサーのパイプラインは更に増加しており、既に保有しているホテルポートフォリオの規模と同程度、あるいはそれ以上の規模に達しています。つまり、今後数年間で現在のホテルポートフォリオを倍増させるポテンシャルがあることになり、これが当社の最大の強みの1つと言えます。
ホテルには「リゾートホテル」「ビジネスホテル」「シティホテル」「旅館」「サービスアパートメント」などの種類がありますが、インヴィンシブルが投資しているのは一般にビジネスホテルと呼ばれる宿泊特化型ホテル。その理由は。
福田氏当社保有ホテルの内、88%が宿泊特化型となっていますが、当社が宿泊特化型にフォーカスする理由は主に2つあります。まず1つめは、ルームビジネスの収益性が圧倒的に高いことです。フルサービスホテル、リゾートホテルは料飲等、非宿泊収入のウェイトが高く、競争力を高める為には多くのコストがかかります。当社保有の宿泊特化型ホテルのGOP(売上高営業粗利益)比率が50〜60%であるのに対し、フルサービス・リゾートホテルのGOP比率は一般に20〜30%であり、収益力に大きな差があります。
もう1つの理由は、今後の成長性が高いという点です。インバウンドを中心とする需要拡大により最も恩恵を受けるのは宿泊部門であり、宿泊特化型ホテルにおいてGOPの成長性が最も高いと考えられます。
これだけの資産規模を有しながら宿泊特化型ホテルにフォーカスして投資しているのがインヴィンシブルの特徴ということですね。他にも特徴的な施策はありますか。
福田氏保有するホテル物件の賃料に占める変動部分の割合が大きい点があげられます。当社はホテル物件のほとんど(94%)で変動賃料を採用しており、ホテル売上からホテル運営に関する費用とマネジメントフィーを差し引いた金額(GOP)が変動賃料としてリートの収益となります。
変動賃料方式は日本のホテル業界では依然少ないですが、世界的に見ればマネジメントコントラクト(管理運営受託)方式と変動賃料方式が主流です。ホテルはいわゆるオペレーショナルアセットであり、ホテル運営による収益のアップサイドは投資家が享受すべきという考え方です。固定賃料方式は安定的である一方、ホテル業績が好調の時でも賃料にすぐに反映することは難しく、悪い時には現実的には減賃リスクがあります。
宿泊特化型にフォーカスしている、ほとんどの物件で変動賃料を採用――ある意味で、日本のホテル市場の現状に対応した施策といえそうですね。
福田氏我々は日本のホテル市場が構造的な転換期あると考えており、ホテル業界の成長自体をリートの投資家に直接還元できる仕組みを取るべきであると考えました。日本のホテル業界は過去20年以上、新規供給が限定され、十分な資本投資も為されない状況が継続してきましたが、政府の観光立国政策により、「基幹産業」と位置付けられたと考えています。背景にはアジア諸国の中間所得層の急速な拡大があり、中国では今後10年間で3億人を上回る中間所得層が新たに生まれると予測されています。フィリピン、インドネシア、ベトナム、インド等においても同様の人口増が見込まれており、これらのアジア諸国から最も近く魅力的な外国が日本です。インバウンド数が2,000万人に増加したと言っても、「まだ2,000万人しか来ていない」と捉えるべきだと考えます。
それらを踏まえたうえで、
今後の成長戦略についてお聞かせください。
福田氏外部成長としては、ポートフォリオの拡大に伴い、宿泊特化型ホテルにフォーカスしつつ、需要の分散等の観点から他のホテルタイプへの投資も実施していく方針です。今年3月に「ホテルエピナール那須」というリゾートホテルを取得しましたが、同ホテルの国内需要(国内顧客売上)比率は約97%となっています。2015年の年間客室稼働率は87%と、旅館を含めた日本のリゾートホテルの平均40〜60%と比べて圧倒的に高い稼働率を誇るホテルです。このように、リゾートホテル、フルサービスホテル等、他のホテルタイプへの投資を行う場合、年間を通して高稼働が見込める、宿泊ビジネスのウェイトが高く、今後も宿泊収入の成長が期待できる等、収益性・競争力の高いホテルに厳選して投資を行う方針です。
内部成長面では、グループ内にホテルオペレーターのマイステイズ・ホテル・マネジメント(以下、MHM)を有していることが最大の強みです。MHMは自社ウェブサイトを多言語化するだけではなく、「3クリックシステム」等、ウェブ予約における操作性向上や、顧客の照会に対し即座に4か国語で返信する「ライブチャット機能」など、大手ホテルチェーンですら実施していないゲストリレーション機能を有しており、更にこれらの機能を強化しています。今後も拡大するインバウンド需要の獲得において、他のホテルに優位に立つための極めて大きな差別化要因であると考えています。
当社保有ホテル、及びパイプラインホテルは、東京・名古屋・大阪・京都・福岡・札幌・金沢など国内大都市圏に集中しており、インバウンド需要の継続的増加が見込めるだけでなく、国内のビジネス・レジャーの需要が高いエリアに立地していることから、今後も相対的に高い成長を継続していくことが可能であると考えています。
≪[第2回] 星野リゾートブランドの魅力を体験「ホテル・旅館特化型リートの今後の狙い」
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